皆様こんにちは。早川千晶です。

3月中旬から現在までマゴソスクールおよびジュンバ・ラ・ワトトが接している状況について、ご報告いたします。
いつもご支援くださっている皆様、本当にありがとうございます。

ケニアでは、3月15日に大統領令が発令され、3月16日からすべての学校が閉鎖されることになりました。これは、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐための対策として政府が決定しました。学校は直ちに閉鎖、子どもたちは学校に集まることは許されず、給食を継続することも許されていません。

マゴソスクールでは、キベラスラムの貧困児童が600名近く通ってきて、朝と昼の給食を学校で得ることで子どもたち本人とその家族の暮らしを支えていました。
また、居住している子どもたちはマゴソスクールと、ジュンバ・ラ・ワトトの2か所で生活をしていました。
この子どもたちは、孤児、家庭状況の特に悪い子どもたちで、衣食住のすべてを提供してきました。政府の指示で、この子どもたちの生活の場も解散させなくてはならなくなりました。

しかしまずは、ジュンバ・ラ・ワトト(モンバサ近郊の子どもの家)の子どもたちは、家庭に帰さると安全が得られない状況であり、キベラに帰るとむしろ危険で、出来るだけ長くジュンバ・ラ・ワトトで清潔な共同生活を送り、衣食住を確保できたほうが安全だろうと私は判断して、そのまま継続していました。

ところが、解散し子どもたちをいったん保護者のもとに返さなくてはならないという指示が出て、4月1日(月)にジュンバ・ラ・ワトトを出発してキベラスラムに戻り、子どもたちを各保護者のもとに返すことになりました。

マゴソスクールに居住していたマゴソファミリーの子どもたちに関しては、完全に帰る場所のない子どもたちのみが残り、保護者がいる子どもたちは帰しました。そのため、現在残っている子どもたちは9名がリリアンのもとに残って生活をしています。

それ以外の子どもたちは、親が死亡している場合でも、親戚や保護者となる何らかの人物がいて、そもそもはその人たちがかなり生活状態が悪いために子どもを保護したのですが、その困難な生活環境に子どもたちを戻さざるを得ませんでした。

3月15日の大統領令以降、あれよあれよという間に、ケニアでは毎日、新型コロナウィルスの感染者が増え、それに応じて政府からも次々と新しい発令がされました。
3月22日には、ケニアのすべての国際線が3月25日深夜から停止することが発表され、外国人の帰国が促されました。
私はケニアに残ることを決め、毎日めまぐるしく動いていく状況を見ていました。
その次には夜間外出禁止令が発令され、午後7時から午前5時までの行動が禁止されました。
感染者は日々その数が増えていき、キベラスラムでも3月31日までに4名の陽性者が出ました。

このように急速に事態が悪化していく中で、多くの方々からご心配をいただき、出来ることがしたい、何か支援できる方法はないかというお問い合わせをいただきました。
私のほうでは、まずは状況把握と、どんな動きをするかの判断をするのに時間を要していたため、すぐにお返事が出来なくて申し訳ありませんでした。

私が懸念したことは、まずは、複数の人間で集まることが禁止され、例えば石鹸や食料を配布するにあたっても、人を集めることは感染の危険があり出来ません。
たとえそのための支援金を受け取ったとしても、その扱いを非常に注意深くやらなければ、それを扱う人物を感染の危険にさらすことになります。

また、まずはマゴソスクールの教員やスタッフ全員がキベラスラムの在住者であるため、彼らと彼らの家族の安全確保が先決であり、それは、各自の判断と選択にゆだねなければならず、各自の準備にも時間を要すると思いました。

そこで、大統領令から2週間がたちましたが、これまで何も具体的な提案をすることが出来ず、お詫び申し上げます。

事態は日々悪化しており、キベラスラムでも多くの人々が不安にさらされつつも、逆に事態を一切理解しておらず、軽視している人、指示を無視している人、無理解から感染拡大への大きな危険も生まれています。

だいたいの状況が把握できてきましたので、ダン校長先生とオギラ教頭先生と話し合い、今後の具体的な動きを始めることにしました。

まずは、この両者の家族を安全な場所に避難させることを先決で行います。
特にオギラ先生の2人の息子は血友病という先天性の病気を抱えており、それに伴う血友病性関節炎の悪化により、すでに歩くことが出来なくなっており、鼻血などの出血が止まらず、体が弱っています。
昨年6月からケニア国内で血友病の薬が無くなり、まったく何の治療も受けられないまま現在に至っています。ここ数日も、鼻血が止まらず、衰弱が激しいので、ケニヤッタ国立病院に連れて行ったところ、コロナ対応のために一般患者の対応を中止していると通告されました。この衰弱した状態でコロナに感染すると非常に危険なので、早急に安全な場所に移動させたいが、その長距離バスが現在、国からの発令で、乗客同士の距離を取らねばならず、そのため、通常の交通費の倍かかり、さらに、子どもも大人運賃が適用されるとのことで、キベラスラムの人々にとっては自力でそれをまかなうことが不可能になっていました。

さらに、食料品の値段の高騰が起こっており、通常の1か月分の生活費では生活できない状況になっています。マゴソスクールではこの状況において2カ月分の給料を一気に支払いしたのですが、それが1カ月で無くなってしまったそうで、職員の誰もが生活費に困っています。

そして、学校に来れなくなったマゴソスクールの子どもたちとその家庭、そして解散せざるを得なかったジュンバ・ラ・ワトトの子どもたちとその家庭の中には、重度の病気を抱えた保護者や、祖父母しか保護者がいない子どもたちもいて、極度の貧困家庭ばかりです。通常でも日々の食料に事欠き、衛生状態の良い住環境は得られません。
その子どもたちをこのまま長期に渡って放置することは、彼らの命をおびやかすことになると思います。

ただ、その対応を行うのは、その意志がある者にしか出来ないと思います。マゴソスクールの職員の中にも、高齢だったり、疾患を抱えている人もいます。情報によると、かつて肺結核を患ったことのある人はコロナウィルスに感染すると重症化する恐れがあるとも聞きました。キベラスラムでは、肺結核を患ったことがある人は多いです。

各自のそのような状況を思うと、たとえ我々が子どもたちやコミュニティのために何らかの支援をしたいと願っても、それを行う意志がある人で、自分自身の健康も確保でき、感染防止の対策をしっかりと出来る人にしか、扱えないと思います。

その危険性が重々わかっているだけに、私はすぐに決断することが出来ず、状況を観察しながら考えていました。

ところが、今日、ジュンバ・ラ・ワトトの子どもたちが解散せざるを得ない状況になり、早く動かなければ様々なことが間に合わなくなると思いました。例えば、田舎に移動するとしても、今後いつ何時、ケニアは完全ロックダウンするかもわかりません。そうなると、都市から田舎への避難は出来なくなります。

そこで私が相談したダン校長先生とオギラ教頭先生は、自分の家族を田舎に避難させてからあと、自分だけでキベラスラムに戻ってきて、困難な状況にあるマゴソスクールの子どもたちやその家庭を特定して、配布のために人々を集めるのではなく、一人一人に対応していく形でのサポートを行っていきたいと言ってくれました。
それも、いつまで出来るかわかりませんが、出来る限りのことをしたいと思っています。

また、通常皆様にご支援いただいているマゴソスクールの運営にかかる経費は、万が一の事態を考え、通常よりも多くマゴソスクールに対して送金をしており、6月まではまかなえるものとなっています。授業は行えませんが、職員への給料は支払いを続けて、彼らと彼らの家族の生活を支えていきます。

また、リリアンは現在、マゴソファミリーの子どものうちジョシュア・オモンディが末期ガンを患っており、その対応に追われているため、リリアンには負担をかけないように、私と、ダン先生、オギラ先生、ジュンバのケビン先生、の4人でチームを作り、今後の対応をしていこうと話し合っています。

配布していきたいと考えているのは、感染拡大を防ぐための石鹸、生活状況を整えるための食料、を基本として、その他どのような状況に接しているかを特定していき助けが必要な子どもたちに出来る限りの支援を提供していきたいと願っています。

以上、3月中旬から現在までの急展開でのマゴソスクールの状況と、今後の対応策のご報告でした。
今後も、刻一刻と状況が変化していくため、随時お伝えしていければと思います。

いつも暖かいご支援を賜りまして心から感謝申し上げます。現在は、世界中が大きな渦に巻き込まれており、世界中の国々が困難な状況に陥っています。日本も例外ではありません。皆様のご無事を心から祈っています。
私たちも感染拡大を防止するために、出来る限りのことをしていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

2020年4月1日

早川千晶