松葉さんは自転車で8年間、世界を65000kmも走った旅人です。
そしてキックボクサーでもあります。
松葉さんが以前ケニアに届けてくれたグローブで、マゴソスクールのオギラ先生はキベラスラムのチビッ子たちや若者たちのためのボクシングジムを作りました。キベラスラムのボクサーの友達がコーチをしています。
オギラ先生の近所の学校の教室を間借りして、毎日放課後から夜にかけてみんなで練習をしています。
松葉さんがそのジムを訪ねてくれました。
本当に何にもない、床もボロボロ、リングがないのはもちろんのこと、まともな靴もない子どもたちと若者たちが、楽しそうに、そしてとても真剣に、体を鍛え、練習していました。
古ぼけたサンドバッグがひとつ、吊り下げられているだけの部屋です。
ここに集う子どもたちはほとんどが孤児、そしてとても貧しい家庭の子どもたちです。キベラスラムの場合、孤児や貧困児童は早くから犯罪や麻薬などに巻き込まれて人生転落していくケースが多く、そんな子どもたちが居場所や夢を持てたら、人生は大きく変わっていきます。
貧困や空腹から犯罪に巻き込まれていく子どもたちは、多くの場合、早くに命を失っていきます。警察に撃ち殺される子どもたち、若者たちが、キベラではとても多いです。
何もない粗末な部屋で、走ったり腹筋したりシャドーボクシングをしたりしている子どもたちのイキイキした姿を見ていたら、すごく楽しそうで、胸が熱くなりました。
一番年上のリチャード・オゴラくん(22歳)は、この前大会に出て優勝したそうです。彼が小さな子どもたちの指導もしていました。
松葉さんが自分が使っていたグローブを持ってきてくれて、それを袋から取り出したら、みんな急に立ち尽くして、息を呑み、それを一心に無言で見つめています。
松葉さんがそれをそっと、ひとりの男の子に渡したら、彼はすぐにそれをはめ、みんなもいっせいに動きはじめました。
すごく嬉しい気持ちが伝わってきます。
みんなの練習をしばらく見ていた松葉さんからアドバイス。
時計もなく、適当に時間を区切って練習しているけど、3分か3分半、そのあと1分、と、キッチリと時間を計って合図を出し、その時間の長さを何度も何度も体にしみこませて、3分で何ができるのか、1分で体をどこまで回復させられるのか、ということを徹底的に体に刻み込むようにと。
そのアドバイスを聞いてまた目を輝かせて練習に打ち込む彼らの表情を見てると、本当に目頭熱くなりました。
松葉さん、みんなに夢をありがとう。
リチャードくん(写真後列の青いシャツ)、どんどん鍛えてもっともっと強くなって、ケニアのチャンピオンになって、2020年東京オリンピックに来るのを待ってるよと言ったら、ものすごく嬉しそうに顔を上気させていました。