Lwabi Form3 and Atamba Form2 at Ebunangwe Boys Sec School.

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マゴソ卒業生のルワビ(兄)とアタンバ(弟)、一学期の終わりにオギラ先生が西ケニアの彼らの高校を訪ねて写真を撮ってきてくれました。

ルワビとアタンバについてはこれまでもご紹介してきましたが、母親が死んでから姉弟がバラバラに親戚に連れて行かれて、姉のエミテワは12歳でスラムで子守り、弟たちは家畜小屋に寝させられて働かされていたところから助け出してマゴソスクールにやってきた生徒たちです。

昨年12月キベラスラムの出稼ぎ労働者だった父親が亡くなり、10年以上前に母親も亡くなりました。マゴソスクールで支援を受けて小学校を卒業するまではよかったのですが、その後高校生になり、年老いた父親の病、キベラスラムでの極度の貧困状態、将来への不安など、かなりのストレスが彼らにはあったのだと思います。支援を受けてなんとか高校に入ることができたのに、非行事件を起こし弟アタンバは停学処分の末に退学、兄ルワビは一生懸命がんばっていたものの放火事件の容疑者とさせられ一方的に退学処分にあい、キベラに戻り病気で寝たきりの父親の介護を日雇い労働をしながらしていたが、その末に父親が亡くなりました。

この数年、彼らの人生は絶望のどん底であったと思います。

昨年末、父親の葬式の段取りを、オギラ先生が田舎の村まで行ってすべてやってくれて、その田舎の村の様子を私に逐一報告してくれました。極度の貧困の村。働きたくても仕事はまったくない。男性たちはほとんど全員が地酒を飲んで朝から晩まで酔っ払っている。(その男性たちはオギラが言うには、やはりキベラスラムの出稼ぎ労働者だが、キベラの密造酒の酒場通りで朝からくだを巻いている輩。オギラはそこを通るたびに見たことがある顔だという。葬式のために田舎に帰ってきたが、やはり朝から酒を飲み続けている。)

父親には3人の妻がいて、そのうち2人が死亡、1人が残っているが彼女も貧困の中疲れきって、満足に食料も得られない。数多くの子どもたちの中で、高校に行くことができた子どもは一人もいない。

何とか葬式を終え、そのあと話し合い、ルワビとアタンバはもう一度高校で学ぶチャンスが欲しいと涙ながらに言いました。私はとても迷いましたが、これが本当に最後の最後のチャンスだと、彼らは田舎の学校に編入しました。

一学期途中からの編入だったのですが、学期末になりましたのでオギラ先生が学校まで様子を見に行ってくれました。

そして私は彼らと電話で話をしました。そして、見違えるようにイキイキとした様子、未来に向けての希望を語る彼らの様子、そして学校に戻ることができた感謝と、どんなに困難でも負けずにがんばるという決意を語ってくれました。

私は正直いってとても驚きました。声の張りも、まるで別人のようです。あらためて、親の病気や極度の貧困状態が、どれほど子どもたちにストレスや不安を与え、学校生活にまで影響を与えるかということを痛感しました。

そして田舎の家を訪ねてくれたオギラが、亡くなったお父さん、お母さんの写真を送ってくれました。これを見て涙が出て仕方がありませんでした。私はこのキベラの出稼ぎ労働者だった父親をとてもよく知っています。長年の付き合いでした。写真に写っていたのは、びっくりするほど若々しいお父さんの姿でした。いくつかの写真から、ささやかな幸せを大切にしてきた暮らしの様子が伝わってきました。このキラキラと目を輝かせている写真の中の若者を見ながら、あの晩年の老いさらばえたお父さんの姿を思うと、涙が出ました。

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病がどれほど彼ら貧困者の暮らしをむしばむかということや、それがどれほど子供たちを苦しめるかということを実感しましたし、厳しいスラム暮らしは人を早く老いさせることもつくづく痛感しました。

そして、アタンバとルワビにとって、高校に行くということは、人生を変えるための唯一のチャンスであるのと同時に、生きるための唯一の希望だったのだろうということを実感しました。

がんばって学んでほしいと思います。そして、再びチャンスを得た学校生活を思いきり楽しんでもらいたいと思います。人生に悲しいこと苦しいことがたくさんありすぎた彼らですが、それでも、やぱり思いきり楽しい学校生活を送ることが、彼らの今後の人生を支えるだろうと私は信じています。

電話の声は静かにはずんでいて、学校がとても楽しい、先生方がとても親切にしてくれる、とアタンバは語っていました。

人生はやり直すことができるのだと、これで絶体絶命の終わりなんてことは決してないのだと、私もまた彼らによって信じさせてもらうことができました。素行が悪い生徒とも、辛抱強く付き合ってくださって、もう一度チャンスをくださった支援者の皆様に心から感謝申し上げます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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