最近ケニアは本格的に雨期に入ったのか、雨が降り続いている。そして雨が降るとグッと冷えるようになってきた。
これからケニアは冬に向かう。特に6月、7月、8月はかなり気温が下がり、標高が1800m近くある高地のナイロビでは、朝晩は日本の冬と同じくらい冷え込む日もある。
そんな冷えを、半壊状態の長屋の一室で耐えなければならなかったら、そして雨が降りこむほど壁は崩れ、雨漏りし放題なほど屋根に穴が開いていたら。
雨漏りで水浸しになった毛布やマットレスはなかなか乾かず、そもそもが子どもたちは土がむき出しの土間にズタ袋を敷いただけの寝床にギッチリと折り重なるように寝なければならず、そこに流れ込んできた汚水でドロドロになっているとしたら。
そのような生活環境しか得られない暮らしの状況だったら。しかも、そこで衛生を保ち、コロナと闘わなければならないとしたら。
その環境で、子どもたちを病いから守らなければならないとしたら。
もしもそれが自分なら。

最近、キベラスラムでは咳き込む人が多くなったとスラムの人たちから聞いた。雨が降るとひどい風邪をひく人たちがスラムでは増える。そもそもが栄養状態が悪く、慢性的な疾患を抱えている人も多い。
再び暖かくなるまでの約4ヵ月間(5月~8月)、このコロナとの闘いや、それに伴う経済状態の悪化を合わせ考えると、キベラスラムでは非常に厳しい生死をかけた戦いが長期戦になることが予想される。
食べていないと、体はよけいに冷えて、抵抗力を無くす。出産したばかりで乳飲み子を抱えた母親もいるし、妊娠中の女性もいる。

私は最初は食料を買って配布していたが、今後どのような方法で食料配布をしたらいいか悩んでいるという投稿をしたところ、いただいたアイディアからバウチャー方式の食料支援をすることに決め、その準備を整え、102世帯、約700名への支援を行った。


これは今回1回きりの単発ではなく、毎月行っていきたいと考えている。また、今回は予算不足で含めることが出来なかったが、困窮して食料を必要としている人たちが他にも多数いる。そのため、出来る限り多くの資金を作りだし、対象家族も増やし、出来れば各家庭に提供する食料の量も増やせたらそれに越したことはない。

資金を得る方法については後述するとして、まずはこの食糧配給をどのようなシステムで行ったかを記載したい。
また、基本的に、特別な理由がない限り、マゴソスクールとジュンバ・ラ・ワトトの生徒の家庭を対象とした。

①最初に、最も困窮していて支援を必要とする世帯の特定。
家庭状況を聞き取りしていき、家庭訪問もして、各世帯の子どもの数、保護者電話番号とID番号を一覧表にしていった。
最優先すべき家庭は、もともと貧困苦だったが今回のコロナでさらに収入が無くなった家庭、保護者が病気を抱えている家庭。特にHIVポジティブの人、かつて肺結核を患ったことがある、もしくは現在闘病中の家庭。そして、病気や障害のある子どもを抱えた家庭。
マゴソスクールには、何でもいいから食料をくださいと食料を求めて訪ねて来る人が後を絶たないので、その人たちからも聞き取りをして加えていった。
受取人は基本的に母親(母親が死亡している家庭の場合、家事を支える女性)に指定。
今回の予算内のリストには収まりきれず、ウェイティングリストになっている家庭もある。

②最低限必要としているアイテムの特定と値段の調査。
一世帯あたり3000シリング(約3000円)の予算に収めたいと思ったが、実際は3,164ksh となった。
品目は以下の通り。(スラムの人々の希望を聞いた。)

トウモロコシの粉 8kg、米 5kg、小麦粉 2kg、塩 1kg、砂糖 2kg、紅茶 250g、黄色い豆 2kg、デング豆 2kg、料理用油 3L、棒石鹸 900g x2本、粉洗剤 500g。
料理用の燃料(灯油)もリクエストされたが、予算的に厳しいのと配布方法が難しいので、今回は除外した。

③キベラスラムに最も近いスーパーマーケットのマネージャーに会い、段取りの打ち合わせ。
一気に大勢が来るのは店に負担になるので、午前と午後に人数を分け、時間差で来店するように受け取る人に指示。合計4日間で全員に対応できるようにする。
その後、スーパーマーケットにリストを持参し、バウチャーの購入。
各バウチャーには、受取人の名前、ID番号を記入し、購入アイテムのリストを添付。

④受取人には秘密にSMSで連絡。指定された日時にバウチャーを取りに来るように指示。(大勢にならないように、時間差で。)
各自がそれを持って、指定された日時にスーパーマーケットに取りに行く。

すべての段取りを、途中でいかなる不正も発生しないように、また、混乱を引き起こさないように、細心の注意を払った。

この方式でやってみて、この方法なら資金さえあればもっと多くの人々に安全に食料を提供することも可能だと思ったので、来月はこのリストに加えて、ウェイティングリストになっている人にも提供できるようにしたい。

尚、マスクに関してはリリアンがマスクを作り、マゴソスクールの近所の人々や必要とする保護者には無料で配布している。(オギラは自分のマスクは自分で作った。)

さて、今月はこの方式で提供した世帯と、その前に私がMpesaで支援を送っていた世帯、ロックダウン前の田舎への移動交通費の支援、医療費支援など、合わせると、約50万円の支援を行った。来月からもこのくらいの金額(もしくはそれ以上)は毎月何とか確保していきたい。

資金調達の方法をどうするかであるが、ご参考までに、今月ご支援いただいた方法をお伝えしたい。

*ナクルにお住いのYuka Mwashimba Itakuraさんが、手作りマスクを制作して販売した売り上げをキベラの人たちのためにと寄付してくださった。
*日本にお住まいのChie Shimizuさんが、オンラインによるチャリティトークショーを企画してくださり、その収益を寄付してくださった。
*日本にお住まいの稲川 雅也さんとその仲間たちが、オンラインによるアフリカトークリレーを企画してくださり、そこに出演する講師8名(早川を含む)が、チャリティ出演を承諾し、その収益を寄付してくださることになった。(こちらは5月になってから入金予定。)

アイディアを駆使してキベラスラムの人々への支援になるようにと尽力してくださった皆様に心から感謝申し上げます。
また、オンライントークショーに参加費を支払って参加してくださった皆様にも心から感謝申し上げます。

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さて、今後について、「どのような方法で手助けが出来るか教えてほしい」とのお問い合わせを多数いただき、心から感謝申し上げます。悩みながら、そのお返事を最後に書きたいと思います。
世界中どの国も、どなたもがコロナによる影響で大変な今、ご支援をお願いすることは非常に心苦しく、大変申し訳なく思っています。
しかし、このキベラスラムの子だくさんのご家庭に応援をしたい、何か少しでも助けの手を差し伸べたい、と思ってくださる方がいらっしゃるとしたら、マゴソスクールを支える会で設けているゆうちょ銀行の口座に、一般寄付としてお振込みいただけたら、ケニアに送金して食料配布の資金とさせていただきたく思います。
その口座番号などの詳細は以下に記載があります。
http://magoso.jp/support/donation

また、その他の方法をご希望の方は早川まで直接ご連絡いただけますと幸いです。

どうか皆様も、お体にお気をつけて、ご無事をお祈りしています。
また、この難しい問題を世界中のみんなで協力し合い、励まし合って乗り切っていきたいと願っています。
ご心配をいただき心より感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
早川千晶