映画 A United Kingdomを見た。ボツワナ共和国の初代大統領だったセレツェ・カーマと、彼のイギリス人の妻 ルース・ウィリアムズ・カーマの実話。

王の息子だったセレツェは4歳で両親を亡くし、叔父が摂政となり将来立派な王になるための準備のためイギリスに留学。オックスフォードに留学中にイギリス人女性のルースと出会い、恋に落ちる。1947年のことだ。

アパルトヘイト政策を推進する南ア(当時は南アフリカ連邦)に支配されることを拒み、ボツワナ(当時はベチュアナランド)はイギリスに保護を求めた。その交渉をイギリスと行ったのはセレツェの祖父のングワト王カーマ3世だったという。

恋に落ちた2人は結婚を望むが、この結婚は南アフリカ連邦を刺激し、南アフリカ連邦の資源を必要としていたイギリスによって2人は圧力をかけられ、セレツェの帰国は禁止され、王位継承の放棄を求められる。

実話なだけにハラハラドキドキのびっくり仰天の展開が続くのだが、私が非常に感銘を受けたのは、まずはこのイギリス人女性ルースが素晴らしく勇敢なこと。彼女はひたすら恋に向かってまっしぐらでセレツェを信じ、家族の猛反対を受けながらも、当時世界の最貧国のひとつであったベチュアナランドまで共に渡り、その後イギリスでイギリス政府から軟禁状態になった夫をベチュアナランドで待ち続け、現地で夫不在のままに長女を出産する。

最初は白人妻を受け入れられないと地元の人々にも拒絶されていたルースだが、彼女の純粋さがだんだんと地元の人々にも理解され、受け入れられていく。

彼女は2002年に亡くなったそうだが、彼女の生んだ長男のイアン・カーマは2008年にボツワナの第四代目の大統領となった。ルースは1980年に亡くなったセレツェと隣同士に埋葬されてボツワナの土に眠っているという。

そしてもうひとつ、私が感銘を受けたのは、セレツェが白人女性の新妻を伴い、はじめてベチュアナランドに帰国した際、叔父や親族、そして部族の民衆すべてからも大反対を受けた際、部族会議の場で民衆の前でスピーチをする。そのスピーチの内容が、大変すばらしく、民衆の心を打った。当時南アのアパルトヘイト政策が南部アフリカを覆い尽くそうとしていたが、ベチュアナランドはそれに屈しないと決めたのに、なぜいまこのようにその影響を受け、白人の妻を差別するのか。我々はたとえ白人から差別されようとも、我々の側は違いによる断絶を生まず、誰もが調和しあえる国づくりを目指そう。と、セレツェは民衆に訴えかけ、それが受け入れられて彼は民衆から王位継承を認められた。

民衆から王位継承を認められても、イギリス政府から認められず、帰国を許されずにイギリスに強制的にとどめられる彼のことを、心あるジャーナリストたちが支援する。そんなときにアメリカの採掘会社によってダイアモンドが発見され・・・

次から次へと息を呑むような展開。

セレツェ・カーマが初代大統領として独立以降のボツワナをどう導いていったのか、ルースのその後の子育てぶりなど、続編も見たくなるような映画だ。

時代の激動の中で生きた勇敢な2人の物語。

ナイロビではまだ公開中なのでナイロビにいる方はぜひごらんください。

ロザムンド・パイク主演、実話にもとづいたアフリカ人王子とイギリス人女性の恋を描く『A United Kingdom』